2014年1月22日
”20minutos”(情報源としている無料紙)記事のある見出しに目を疑いました。
「Un español trabaja de media 300 horas más al año que un alemán」
翻訳すれば、「スペイン人一人当たり、年間平均で300時間ドイツ人よりも多く働く」というものです。OECD(経済協力開発機構)が加盟国を対象に、その国の1年間の平均労働時間を調査しているもの結果を受けての記事です。
加盟国(34か国)の平均は1765時間で、主要な国のデータは、ドイツ1397時間、フランス1479時間、イギリス1654時間、スペイン1686時間、日本1745時間、アメリカ1790時間となっています。「最も勤勉なのはギリシア人で2034時間」という文面も見られます。
見出しでは、鬼の首でも取ったかのように「ドイツ人よりも300時間多く働く!」となっていて、何だか誇らしげな印象さえ受けます。私はこれまでいろいろな国の人と会ってきましたが、ドイツ人と言えば、すごく日本人と近い感覚を持っているといった印象です。つまり、ルールに厳格で勤勉なイメージ。ですので、鬼の首でも取ったかのように誇りたい気持ちもわかります。また、11時頃の朝食時間に加え、長い昼休みがあるスぺイン社会で、これほどの労働時間が確保されていることには驚きを禁じえず…。それで、この記事の見出しに目を疑ったというわけです。
ちなみに、「11時頃の朝食時間」と書きましたが、スペインの食事は5回あると言われるほど、ここの食事時間は日本人の感覚に合いません。朝の出勤や登校の前には、飲み物とクッキー(またはシリアルかヨーグルト)程度。当然それでは昼までもちませんので、11時頃にまた何かクッキーやパンの類(たぐい)を。14時は本格的な昼食で、重めの食事をとります。18時頃にはおやつ。そして、20時か21時頃に夕食です。この食事体系で、しっかりとした労働時間が確保されているわけですから、どういうからくりがあるのか、少し不思議に思います。
さて、この記事。最後まで読むと「裏」がありました。記事の最後のほうに「peor productividad」という小見出しがあります。これは、「劣る生産性」という意味です。要するに、働く時間の多さのわりには、生産性が良くないということ。ドイツの生産性が「87.1ポイント」なのに対して、スペインの生産性は「68.5ポイント」。つまり、ドイツ人は「少ない時間で大変効率のよい仕事のやり方」をしている。スペイン人はその逆ということになります。
この調査では、むしろ平均労働時間よりも、この生産性のほうが大切なような気がするのですが、この情報に割かれている記事面積は非常に小さく、先ほどの「鬼の首の見出し」のフォントが異様に大きいです。何だか、少しむなしい…。
というか、もしかすると、生産性などということは、最初からあまり問題視していないのかもしれません。
スペインで生活すると、スペイン人が「怠け者だ」などという印象は決して受けません。お店などでは、皆てきぱきと動いています。ただ、根本的に、「ビジネス上、売り手と顧客とは対等関係」「性格上、お話好き」など、この国特有の性質がありますので、生産性の追求にはそぐわないのではないでしょうか。顧客と対等関係では、なかなか効率の良いサービスも生まれにくいですし、お話好きとくれば、「対・顧客」にも「対・仕事仲間」にも、話す時間が長引きます。そのためか、買い物や手続きの際、「てきぱきと動いてくれているようなんだけど、なぜかすごく待たされる」といったことが多々あります。
日本の場合は、お客様を至上と考えるからこその「効率化」。しかし、スペインの場合、顧客は至上ではなく、自らが気持ちよく働くことも大事。つまり、それを重視するからこその「非効率化」なのではないでしょうか。「非効率化」を狙って働いているわけではないとは思いますが、結果的には、効率化の追求よりも、自らが思うもっと大事なものに向かって進んでいるのではないでしょうか、この国は…。
効率化こそが大事なのか、またはそれ以外に大事なものを追求するべきなのか。この記事から、このようなことを考えた次第です…。
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